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結局、私の配偶者居住権の評価額はいったいいくらなのっ?(計算アプリ付き)
令和2年4月1日以降の相続に適用される配偶者居住権。
いろいろ調べて見たけど、ワタシの具体的な金額が分からなきゃ意味ないじゃない!
と思っている方は、是非この記事をご活用ください。
ちょっと長い記事ですが、最後まで読んでいただければ嬉しいです。
そんなの付き合い切れない、という方は、こちらにご登録ください。
とりあえず、配偶者居住権の計算はサクッとできるようになります。
配偶者居住権って?
(←一応、制度内容から。分かっている方は飛ばしてください)
配偶者居住権の計算の仕組みってどうなってるの?
(←計算の根拠が分かるようになります)
配偶者居住権を使うと相続税が減る?
(←配偶者居住権って、意味あるの?という方に)
配偶者居住権の計算アプリ
(←これを使って実際に計算してみてください)
ご主人を亡くしたN夫人。
N夫人は、これまで通り自宅に住みたい!
これまでは、その願いを叶えるためにN夫人が自宅を相続することによって住み慣れた家に住み続ける、というのが普通でした。
でも、N夫人としては自宅に住みたいだけであって、所有権が欲しい訳ではありません。
売却するつもりが無いのであれば、時価の高い自宅の所有権をもらっても仕方ありません。
同じ評価の財産を相続するのならば、自宅に住む権利+老後の資金という形でもらった方が、N夫人にとっては有難かったりします。
それを実現するための制度が配偶者居住権です。
配偶者居住権を設定すると、配偶者は自宅に住む権利を得ることができます。
逆に、この配偶者居住権が設定された自宅の所有者(通常、配偶者の子など)は、配偶者居住権という負担付きの所有権を持つことになります。
マルマルの所有権を「配偶者居住権」と配偶者居住権負担つきの「所有権」とに分けることになるのです。
N氏は自宅(築5年の木造・建物価額3,000万円+土地価額5,000万円)と現金12,000万円を遺して亡くなりました。
相続人は70歳のN夫人と子一人。 残されたN夫人は自宅に住み続けることになりました。
それを前提にして総額2億円の財産をN夫人と子とで半分ずつ分けるとします。
価値の高い自宅を相続したことにより、N夫人は現金を2,000万円しか相続できないことになってしまいます。
この自宅に70歳のN夫人のための配偶者居住権を設定し、子が所有権を取得するとこんな感じに。
N夫人は8,000万円相当の自宅所有権の代わりに、4,755万円相当の配偶者居住権をもらうことになります。
自宅に住み続けるだけなら、所有権は要りません。これで十分です。
所有権価額と配偶者居住権価額との差額を現金で貰えば、老後の生活も安心! N夫人は自宅に住み続けながら、現金を5,245万円も相続できることになります。 同じ一億円ずつの相続でも、内容はこんな感じになります。 自宅を4,755万円の居住する権利(=配偶者の権利)と、3,245万円の所有権(=子の権利)とに分けることができるのです。
そもそも、配偶者居住権の計算の仕組みってどうなっているのでしょうか?
法務省の資料には、計算方法が提示されています。
大きく3段階に分けて考えるとわかりやすい(ような気がします)
①配偶者居住権が消滅する時の制限付所有権価額の計算
②制限付所有権価額の現在価値への割戻計算
③現在の所有権価額から制限付所有権価額の差引計算
配偶者居住権の存続期間を「終身」として設定した場合には、
配偶者居住権の存続する年数=平均余命の年数
として計算します。
平均余命は厚生労働省の生命表から読み取ることができます。
例えば70歳女性の平均余命は20年なので、配偶者居住権の存続期間も20年ということになります。
配偶者居住権設定時の建物価額が3,000万円、新築時から5年経過しているとします。
その築5年の建物価額(=3,000万円)が、経年劣化により配偶者居住権消滅時(=20年後)にはいくらになっているか、を計算しなければなりません。
その計算には、建物の法定耐用年数を利用します。
上記建物が木造の場合、自宅用なので耐用年数は33年になります。(木造建物の法定耐用年数は22年×自宅用の建物の耐用年数として1.5倍)
現時点(配偶者居住権設定時)の残存年数は28年(33年ー5年)
今から28年後には価値が無くなると言う事になります。
配偶者居住権が消滅するのは、20年後なので、配偶者居住権消滅時の建物の残存年数は8年ということになります。(28年ー20年)
その時の建物価額は、3,000万円×8年/28年=857万円
20年後、配偶者居住権が消滅することによって子が取得する完全な建物所有権の価値は857万円ということになります。
でも、20年後の857万円と、今すぐもらえる857万円が同価値である訳はありません。
20年後の857万円を現在価値に割り戻す必要があります。
投資指標の一つであるNPVの計算と同じ方法で計算します。(NPVについては別の機会にご説明します)
結論としては、法定利率3%で割り戻した場合、20年後に貰える857万円は、今すぐ貰える475万円と同価値になるのです。(この減価割合をライプニッツ係数と呼ぶみたい)
この475万円は、子が取得する、配偶者居住権という制限のついた所有権の価格です。
配偶者居住権価額を計算するには、現在の建物価額から、上記所有権価額を差し引けば良いことになります。
配偶者居住権の価値は、
3,000万円ー475万円=2,525万円
ということになります。
以上で、建物についての配偶者の権利を計算することができました。
次に、土地について、居住権に基づく敷地利用権を計算します。
と言っても、考え方は建物の場合と同じです。
ただ、土地の場合、経年劣化という考え方がありません。
現在5,000万円の土地は、20年経っても5,000万円の価値を維持しているものとして計算すれば良いので、建物の計算よりも簡単です。
法定利率3%での割戻計算の段階(②の段階)から計算すれば良いことになります。
20年後の5,000万円を現在価値に割り戻すと2,770万円。
現在の土地価格5,000万円から2,770万円を差し引いた2,230万円が配偶者の取得する、配偶者居住権に基づく敷地利用権の評価額ということになります。
配偶者は、建物の権利(配偶者居住権)として2,525万円、土地の権利(配偶者居住権に基づく敷地利用権)として2,230万円、合計4,755万円の権利を取得します。
子は、建物の権利(制限された所有権)として475万円、土地の権利(制限された所有権)として2,770万円、合計3,245万円の権利を取得します。
配偶者居住権を設定することにより、相続税額は減るのでしょうか?
配偶者居住権は配偶者が亡くなると消えてしまいます。 配偶者居住権が消えると、所有権は負担の無い完全な所有権に戻ります。
配偶者居住権という負担が無くなった所有権の経済的価値は増える ことになります。
でも、その価値増加については課税されません。
この性質により、結果として相続税が減る場合が発生します。
例えば、上記N氏の場合で考えてみます。
配偶者居住権の計算をやるのは面倒だ!という方のために、計算アプリをこちらで公開しています。
その使い方は、こちらをご参照ください。
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令和2年4月1日以降の相続に適用される配偶者居住権。
いろいろ調べて見たけど、ワタシの具体的な金額が分からなきゃ意味ないじゃない!
と思っている方は、是非この記事をご活用ください。
ちょっと長い記事ですが、最後まで読んでいただければ嬉しいです。
そんなの付き合い切れない、という方は、こちらにご登録ください。
とりあえず、配偶者居住権の計算はサクッとできるようになります。
目次
配偶者居住権って?
(←一応、制度内容から。分かっている方は飛ばしてください)
配偶者居住権の計算の仕組みってどうなってるの?
(←計算の根拠が分かるようになります)
配偶者居住権を使うと相続税が減る?
(←配偶者居住権って、意味あるの?という方に)
配偶者居住権の計算アプリ
(←これを使って実際に計算してみてください)
配偶者居住権って?
ご主人を亡くしたN夫人。
N夫人は、これまで通り自宅に住みたい!
これまでは、その願いを叶えるためにN夫人が自宅を相続することによって住み慣れた家に住み続ける、というのが普通でした。
でも、N夫人としては自宅に住みたいだけであって、所有権が欲しい訳ではありません。
売却するつもりが無いのであれば、時価の高い自宅の所有権をもらっても仕方ありません。
同じ評価の財産を相続するのならば、自宅に住む権利+老後の資金という形でもらった方が、N夫人にとっては有難かったりします。
それを実現するための制度が配偶者居住権です。
配偶者居住権を設定すると、 配偶者は自宅に住む権利を得ることができます。
逆に、この配偶者居住権が設定された自宅の所有者(通常、 配偶者の子など)は、 配偶者居住権という負担付きの所有権を持つことになります。
マルマルの所有権を「配偶者居住権」と配偶者居住権負担つきの「所有権」とに分けるこ とになるのです。
配偶者居住権の具体例
N氏は自宅(築5年の木造・建物価額3,000万円+土地価額5,000万円)と現金12,000万円を遺して亡くなりました。
相続人は70歳のN夫人と子一人。 残されたN夫人は自宅に住み続けることになりました。
それを前提にして総額2億円の財産をN夫人と子とで半分ずつ分けるとします。
配偶者居住権を使わない場合
価値の高い自宅を相続したことにより、N夫人は現金を2,000万円しか相続できないことになってしまいます。
配偶者居住権を使った場合
この自宅に70歳のN夫人のための配偶者居住権を設定し、子が所有権を取得するとこんな感じに。
N夫人は8,000万円相当の自宅所有権の代わりに、4,755万円相当の配偶者居住権をもらうことになります。
自宅に住み続けるだけなら、所有権は要りません。これで十分です。
配偶者居住権の計算の仕組みってどうなってるの?
そもそも、配偶者居住権の計算の仕組みってどうなっているのでしょうか?
法務省の資料には、計算方法が提示されています。
大きく3段階に分けて考えるとわかりやすい(ような気がします)
①配偶者居住権が消滅する時の制限付所有権価額の計算
②制限付所有権価額の現在価値への割戻計算
③現在の所有権価額から制限付所有権価額の差引計算
①配偶者居住権の消滅する時の制限付所有権価額の計算
配偶者居住権の存続期間を「終身」として設定した場合には、
配偶者居住権の存続する年数=平均余命の年数
として計算します。
平均余命は厚生労働省の生命表から読み取ることができます。
例えば70歳女性の平均余命は20年なので、配偶者居住権の存続期間も20年ということになります。
配偶者居住権設定時の建物価額が3,000万円、新築時から5年経過しているとします。
その築5年の建物価額(=3,000万円)が、経年劣化により配偶者居住権消滅時(=20年後)にはいくらになっているか、を計算しなければなりません。
その計算には、建物の法定耐用年数を利用します。
上記建物が木造の場合、自宅用なので耐用年数は33年になります。(木造建物の法定耐用年数は22年×自宅用の建物の耐用年数として1.5倍)
現時点(配偶者居住権設定時)の残存年数は28年(33年ー5年)
今から28年後には価値が無くなると言う事になります。
配偶者居住権が消滅するのは、20年後なので、配偶者居住権消滅時の建物の残存年数は8年ということになります。(28年ー20年)
その時の建物価額は、3,000万円×8年/28年=857万円
20年後、配偶者居住権が消滅することによって子が取得する完全な建物所有権の価値は857万円ということになります。
②制限付所有権価額の現在価値への割戻計算
でも、20年後の857万円と、今すぐもらえる857万円が同価値である訳はありません。
20年後の857万円を現在価値に割り戻す必要があります。
投資指標の一つであるNPVの計算と同じ方法で計算します。(NPVについては別の機会にご説明します)
結論としては、法定利率3%で割り戻した場合、20年後に貰える857万円は、今すぐ貰える475万円と同価値になるのです。(この減価割合をライプニッツ係数と呼ぶみたい)
この475万円は、子が取得する、配偶者居住権という制限のついた所有権の価格です。
③現在の所有権価額から制限付所有権価額の差引計算
配偶者居住権価額を計算するには、現在の建物価額から、上記所有権価額を差し引けば良いことになります。
配偶者居住権の価値は、
3,000万円ー475万円=2,525万円
ということになります。
以上で、建物についての配偶者の権利を計算することができました。
土地についての計算
次に、土地について、居住権に基づく敷地利用権を計算します。
と言っても、考え方は建物の場合と同じです。
ただ、土地の場合、経年劣化という考え方がありません。
現在5,000万円の土地は、20年経っても5,000万円の価値を維持しているものとして計算すれば良いので、建物の計算よりも簡単です。
法定利率3%での割戻計算の段階(②の段階)から計算すれば良いことになります。
20年後の5,000万円を現在価値に割り戻すと2,770万円。
現在の土地価格5,000万円から2,770万円を差し引いた2,230万円が配偶者の取得する、配偶者居住権に基づく敷地利用権の評価額ということになります。
各人の取得する権利の計算
配偶者の取得する権利の計算
配偶者は、建物の権利(配偶者居住権)として2,525万円、土地の権利(配偶者居住権に基づく敷地利用権)として2,230万円、合計4,755万円の権利を取得します。
子の取得する権利の計算
子は、建物の権利(制限された所有権)として475万円、土地の権利(制限された所有権)として2,770万円、合計3,245万円の権利を取得します。
配偶者居住権を使うと相続税が減る?
配偶者居住権を設定することにより、相続税額は減るのでしょうか?
配偶者居住権という負担が無くなった所有権の経済的価値は増える ことになります。
でも、その価値増加については課税されません。
この性質により、結果として相続税が減る場合が発生します。
一次相続時にかかる相続税額
例えば、上記N氏の場合で考えてみます。
二次相続時にかかる相続税額
配偶者居住権を使わない場合
配偶者居住権を使った場合
ご注意
配偶者居住権の計算アプリ
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